interview
内海智行さんxサイトウナオコさん

手離れの悪さが良さ

手離れの悪さが良さ

内海智行

U:それがcollaboreの役割だよね。collaboreの家具を置くことで、そこから一歩一歩自分で何か他にも良いものを取り入れていくと良いよね。collaboreの良さは、とにかく手離れが悪いところだよね(笑)。

Y:基本的に、製造業である程度の規模で運営している会社は、手離れをとにかく良くすることを優先してきましたが、それが日本では過剰になりつつあります。そうすると製品デザインがつまらなくなってきますよね。まあ、うちは手離れが悪いおかげでお客さんと深く付き合えるので、それでいいんですよ。

内海智行

U:先を読みすぎて、どんどん手離れが悪くなることをしてるよね。

家具を人生に取り込む

サイトウナオコ

S:大人に絵を教えているんですが、たぶん子供よりも大人の方が、線を失敗することに抵抗を持っているんです。線を失敗すると、このまま続けるべきか、絵を真っさらにすべきかの二択になりがちなんです。
その場合、その線をちょっと「シュシュ」とぼかしてあげて、「この線を痕跡として残して、この色をここに使いましょう」と伝えます。そして「では、その上にもう一回線を引いてみましょう」と言うと、みんなの顔が「ふわぁ〜」っと楽になるんです。自分が引いた線を「失敗」と思いがちですが、多くの人は、その失敗を「ゼロに戻したい」「過去を消したい」と考えて全消ししてしまい、振り出しに戻ってしまいます。でも、失敗は痕跡として残るんです。

内海智行

U:プロセスが瞬間的に行われる音楽の世界でも、ジャズの発生というのはソウルを大切にしているから、瞬間的にミスした音もテンションコードにして展開していくんです。音を外しちゃってる人たちの集まりなわけ(笑)。外しまくっても、いい旋律を作っているんです。そこがかっこいいんですよ。
ショパンやドビュッシーは美しいけど、そういう世界もあっていいと思います。

サイトウナオコ

S:人間はミスってこそなんぼでしょ。

心地悪いと回収

Y:ズレが心地よければいいんです。collaboreは、納品しても置いてみて心地が悪いと、自分で持ち帰っちゃうから。

内海智行

U:全然大丈夫だから『いいよ、そのままで』と言っても、山形さんは持ち帰っちゃうからね。

Y:納品した時にお客さんと同じ気持ちになって『ああ〜たぶん、この和音は気持ち悪いな』と思ったら、お客さんの気持ちを先取りして持ち帰っちゃう。

サイトウナオコ

S:ジャズじゃん。

手仕事が残す未来