U:作品を作る側と受け入れる側のイメージのギャップは、絶対に埋まらないものです。collaboreが持っている世界観とお客さんのイメージの間も完全には埋まらないけれど、collaboreはプロとしてそのギャップを埋めようとします。お客さんにちゃんと説明しようとするcollaboreの山形さんの人間性があり、それがあるからお客さんは安心できます。
collaboreの良さは、現代的な精度と手づくりをうまく調和させようとするスタイルにあります。調和を図れるのは、山形さんが昔の建具職人のように、必要なときには釿を当てて削る技術をしっかり持っているからです。
それがビジネスとしてどうかという部分もありますが、それが残っている最後の世界がcollaboreのスタイルだと思います。
S:モノを作るって、今ないカタチのものが最終的に着地するまでに時差があって、特にcollaboreが作るもののように、mmにこだわるものには既製品にはない情報量があると思うんです。私は額縁しかまだお願いしていないですけど、でもオーダーするにあたって、将来の姿をイメージしながら「ああでもない、こうでもない」とやり取りするのがすごく気持ちいいというか、そんなやり取りができる家具屋さんってあまりないと思うんです。
「これは決まっているから、それは無理です」と言う家具屋さんがほとんどだと思うんですが、collaboreはなんとかしてあげようと動いてくれるんです。
collaboreのお客さんは、そういうところが嬉しいんじゃないかなと思います。実際、注文した家具が家に届いたときの喜び方がすごいのが、Instagramに投稿されているムービーを見ると感じます。
U:あとは、collaboreが時間をかけることによって生まれる「愛着効果」というのが、お客さんに芽生えているんだと思います。
「愛着効果」というのは技術的なものではなく、感情的なものです。「愛着効果」を育むというのは、単に「保証期間が延長される」といった物理的なことよりもずっと重要で、自分の人生とともにものが劣化していったときに、それをなんとか維持しようとすることで、そのものの価値が保たれ、ライフスパンがさらに長くなります。ライフスパンが長いと、それを引き継ごうという次の世代が生まれて、その人たちが共有しようとすることで、引き継がれていくんです。今はそういうものが少なく、みんな捨ててしまいますから。
日本の産業構造にも問題はありますが、ライフスパンを維持しようとする人たちも一定数いるので、その母数が増えるかどうかはとても重要ですね。
collaboreは、そういった人たちのニーズに合致した、希少な家具屋だと思います。
U:さっき言ったように、モノの寿命には「物理的寿命」「感情的寿命」「機能的寿命」などいろいろありますが、collaboreの山形さんは、いろんな意味で「感情的寿命」を伸ばすための答えを出していると思います。それがcollaboreの重要なところです。
建築もそうですが、最初は街に現れて「なんだこれ、違和感しかないじゃん」と思われても、それが馴染んでみんなに承認されれば、「この建物のおかげで街が良くなったね」と次の世代が感じてくれれば、設計者としては成功だと感じられるんです。
建築物ができたばかりの時に「結構、画になるね」と建築雑誌に載るようなものは、むしろがっかりするデザインだったりします。建築が画になるまでには、年月がかかるはずです。周りの草木がボサボサしてきて、建物の外壁が少しやれてこないと様になりませんし、なんなら外構も輪郭がぼやけてきた方が、むしろ引き締まるんです。
日本人ってエッジを立ててキチッと作りすぎるんですよね。みんなシャープすぎちゃう。
年月が経って馴染んでいく過程で、記憶がモノをオブラートに包んで継承していくような感覚があって、それが環境という意味で、自分の身近に現れるのが「家具」なんです。
まぁ、家具を環境や街並みになぞらえるのは少し距離がありすぎるかもしれませんが、さっきインタビュアーの方が仰ったように、「ソファの脚のフォルムが綺麗だな」と感じて、そのデザインの仕組みとして、家具の安定性や材料について考えるきっかけになるとしたら、
私たちの身近にあるもので最も良いサンプルになるかもしれませんね。
S:絵の活動を通じて「ああ、そんなところを見てくれてるんだ」と感じることがあります。コロナの時に展示会ができなくなり、Web上での展示会が増えたのですが、「Web上では買いません。実際に見てテクスチャーを見ないと買いません」という方がいて、Web上で写真を見て絵を買う人が多い中で、そういう見方をしている人がいることにちょっと驚きました。絵を描いている立場としては、物質感がとても重要なので、それを感じてくれる人がいるというのが新鮮でした。そこを感じてもらえるのは、作り手にとっては本当に嬉しいことです。たまに私の絵を見て泣いてしまう人もいるのですが、生で観て、その環境全体を感じることで、観賞者の感情が動くのは作り手としては嬉しいです。
生き方として広く人と関わるというよりも、一つ一つにこだわって、目に届くところで動いていきたいという私の感覚からすると、collaboreの山形さんは大きな仕事をしながらも、目に見えるものを信じて作っている姿が、すごく信頼できると思います。