interview
内海智行さんxサイトウナオコさん

建築の未来

建築の未来

I:建築の未来はどうなっていくのでしょうか。

内海智行

U:モダニズムは工法や材料の表現を重視し、『肌触り』といった感触よりも『工法』や『合理性』、『社会性』など、その時代に求められるものに応じる考え方だと思います。しかし、21世紀に入り、経済や資本のあり方について『これ以上の成熟があるのか?』という問いが生まれ、私たちは日常生活の中で『どのように自分たちの尺度で豊かさを楽しむか』という問題に向き合うようになりました。
その結果、日常の小さな家具や身の回りのものを大切にする考えが広がり、モダニズムの象徴である大きな建築が徐々にその価値観によって崩されているように感じます。

建築は経済優位性

サイトウナオコ

サイトウさん(以降S):あの、素人の素朴な質問をしてもよろしいでしょうか。大きな建物や街づくりでは「建てては壊し」を繰り返しますよね。すごい建築家が設計した建物でも、何年後かには老朽化を理由に新しいものが建てられたりします。
私は自分が作ったものが壊されて作り変えられたら、きっとすごく腹が立つと思うんです。内海さんは、自分が設計した建築物が壊されたら腹が立ちますか?

内海智行

U:作ってから3年も経たないうちに壊されたことがあります(笑)。それも億単位の費用がかかった建物です。建築の世界では、圧倒的に経済が優位にあります。
建築というのは極めて経済的な理由で存在していて、いろいろな意味づけはされるものの、文化的には極めて弱い存在です。ものづくりとしても、人間が身体で感じ取れる範囲をはるかに超えるスケールなので、僕たちも図面で描いても、それは数値にすぎず、できあがって初めて実感としてわかるものなんです。

新しい家具に感じる最初の違和感

サイトウナオコ

S:だんだんと建物が出来上がっていく過程で、「なんか違うな」って思うことはありますか?

内海智行

U:ありますよ。最初の計画段階から違和感を感じることがたくさんあります。建築って、違和感の塊のように思えます。自分が作った次元では違和感があるんですが、使われていくうちにその違和感が徐々に馴染んでいくんです。
僕が家具を好きなのもそこなんです。家具って、買ってきたときにはだいたい少し違和感がありませんか?

サイトウナオコ

S:たしかに、その通りですね。

内海智行

U:最初からはしっくりこないですよね。

職人の調整力