S:お店で見てイメージして、ちゃんとその家具を招き入れるけれど、招いてみたらしっくりこないことがあります。暮らしの中に新しいものが入ってきたから、ということなんでしょうかね。
collaboreの家具は、新しい家具として家に招き入れても、なんだか以前から知っているものが来たような不思議な感覚があります。
U:collaboreは繊細に作っていますよね。エンドユーザーのことをちゃんと考えて、商品としてのクオリティを維持するプロフェッショナリズムがあると思います。
U:伝統的に欧米は石積みの家なので、部屋という空間は穴で、風を通さなければならないため「Window(窓)」が必要なんです。日本の家はそもそも障子の文化で、木の建具が建物にフィットしている文化なので、たわみなどを頻繁に調整しなければいけません。
構造がたわむので、梁を転がしたり、釿(ちょうな)を当てて鉋で削ったりするんです。
S:建具屋さんは梅雨が嫌いなんですよね。
U:そうそう。温度が上がってくると木が反るし、水分を含むと膨らんでくるからね。でもそれを見越して作るのが建具屋の筋なんです。
その建具の延長線上に、collaboreの家具がある気がします。collaboreの家具のスケール感は、建具から来ているんですよ。collaboreの感性は、建具屋さんの感性なんです。日本のほとんどの建具は、柔らかい針葉樹でできていて、釿や鉋が当てやすくなっています。なるべく軽く作って、スッと動くかどうかが建具屋の技術力だったんです。
日本の民家には、柱と梁に戸当たりがついていて敷居があるんです。そこにピタッと建具がハマっていて、スッと動く。小さな建築物の中に、非常に精度の高い技術が反映されていて、それが面白いんです。
I:僕はcollaboreのソファを持っています。家に入れた時は「結構大きいなぁ」と、確かに違和感がありましたが、だんだんと馴染んできて、collaboreではない以前のソファを使っていた時よりも空間が落ち着いてきた感じがします。正直、使うよりもソファの脚のフォルムを眺めている時間の方が長いのですが(笑)。
バランスがすごく綺麗で。そういうのって建具屋的な感覚と関係があるのでしょうか。
U:だから、たぶん日本人もようやく成熟して、自分の家にあるものの価値に気づく時代になってきたのだと思います。その先で「あれ?これ、面白いね」といった発見があり、「なぜ自分にしっくりくるんだろう」と、自分なりに解釈を与えられるようになるといいですよね。
それは非常に重要なことで、今はまだノイズが多すぎて、そうした状況にはなりにくいかもしれませんが、だんだんとノイズが削ぎ落とされていけば、さっきおっしゃったように、ものをじっくり鑑賞できる心の状態になれるのかもしれません。