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篠田さん

箱根細工技能師 篠田 英治さん(寄木工房 銀/雑木囃林)
http://www.zoukibayashi.jp/

篠田 英治さんは、若手の寄木細工職人。

最初にお会いした時の第一印象は「無心無欲」という言葉が当てはまるほど、 「気持ちのいい笑顔をした人」だった。篠田さんの振舞いには「欲」という ものをまったく感じない。まったく濁りがないのだ。
今、この世の中でこれほどまでに、一点の濁りも感じさせない、気持ちのいい笑顔 を見せてくれる人はそうそういない。だからとても不思議だった。 どのような動機で、寄木細工職人に辿り着いたのか。
そして篠田さんがなぜそのように、「無心無欲」のような気持ち良さを放っていられるのかなど。
お話しをうかがってきました。



―どのような経緯で、今の仕事に辿り着いたのかをお聞きしたいのですが、 子供の頃から木工はやっていたのでしょうか。

篠田さん:ものづくりは好きでしたね。木を削ってペーパーナイフを作ったり、 石膏の塊を作って削ったりとか。。

―削るのか好きなんですか?

篠田さん:そうですね。チマチマした作業が好きなんですね(笑)無心で何かをやっていることが好きなんです。だから寄木とかも、こうチマチマチマチマ寄せて。。

―子供の頃からご自分が「無心で作業に没頭することが好きだ」っていうことを 認識されてたのですか?

篠田さん:いや、大人になってからです。寄木ってやっぱり、手間がかかってチマチマした作業だから、「よくできますね」ってたくさんの人に言われますんで(笑)そういう部分は子供の時から変わってないなぁって。

―指物の専門学校に行かれてたんですよね?

篠田さん:そうです。今は名前が変わってしまったのですが、「京都伝統工芸専門学校」 に行っていました。京指物を専攻していました。

―指物に惹かれていたということで専攻されたのでしょうか?

篠田さん:木工のジャンルでは、仏像か京指物しかなかったんですね。 なので指物を専攻したわけです。

―そういう学校があるというのは、いつ頃に知ったのですか?

篠田さん:4つ上の兄が大学受験の時にたまたまその学校を見つけまして(笑) 「お前の好きそうな学校があるぞ」と教えてもらったんです。 「高校出たらここに行きたい」って言いまして(笑)

―幼少期から高校まで、たくさんものづくりをしてたんですか?

篠田さん:やり始めるとずっとやっているんですが、あんまりたくさん作ってはいないです。あと、テレビで伝統工芸を特集していると結構見ていました。

―指物から寄木に行った経緯なのですが、数ある木工のなかで、なぜ寄木職人になられたのでしょうか?

篠田さん:小さい頃に家族旅行で箱根に来た時に、手で触れて、馴染んでいたというのもあるのですが「秘密箱」が昔から好きで、自分で作れたらなと思ったんです。 これなんですけれども。。

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昔はこの箱のことを寄木細工というと思ってたんですよね。

―継ぎ目がわからないほど、綺麗にできるものなんですね(笑)すごいですねぇ。。 寄木職人の仕事の魅力はどこにありますか?

篠田さん: 私の場合は、自分で企画して作った商品の反応が、ダイレクトに感じられるところです。自分で「これ作りたいなぁ」と思った時に作って、実際それが売れた時は楽しいですから。お客さんからの注文で作る時もあるんですが、自分で売るものは自分で考えて、「こんなの作ったんですけど置いてみませんか?」ってお店屋さんやギャラリーに持ってって。


―自分で持って行くんですか?

篠田さん:そうですね。あとは元々取引のあるお店やギャラリーや会社から「何か新しいものはないの?」と聞かれたら「こんなの作りましたよ」ってお見せすると「じゃあ置いてみよう」と言ってもらえて、置いていただいたり。

―基本的には、自分で企画して、自分で作っているんですね。

篠田さん:そうですね。やっぱり店を持っていないので。店を持っていればそこに置くんですけど。

―篠田さんには、寄木細工を使った、ローテーブル新製品の開発に参画してもらってますが、これまでの寄木細工の使い方とは少し違った、ありそうでなかったプロダクトだと思います。なぜ、このような領域にチャレンジしていこうと思われたのでしょうか。

篠田さん:あんまり、私、ものづくりのセンスがないんですよね(笑)今まではひたすら寄木の技術を高めていたんです。ある程度、寄木を作れるようになって「さぁこの寄木の技術を何に使おうか」ということになり、チャレンジしていくことで、ものづくりの幅を広げようと思ったんです。

―色々と吸収しようとしているんですね。

篠田さん:親方からも言われるんです。「寄木の腕は一流だけど、センスがダメだ」って(笑)。
「頑張りまーす」って返事するんですけど(笑)

―チャレンジすることで、どんな部分を吸収しようとしているんですか?

篠田さん:求められたものをカタチにする時って、普段考えないようなことも考えないといけない。そうすると普段やらない仕事の知識を得たり、考えが浮かぶのかなと思うので、 チャレンジするようにしています。自分ひとりでは、考えられることも決まっちゃってるので。

―そこにチャレンジしていく意味としては、寄木のこれからの可能性として「どんな商品に広げていけるのか」など、業界のなかで課題になっていることがあるのでしょうか。

篠田さん:それはやっぱりありますね。だいぶ職人さんも減ってきてるので。箱根だけでは売り場も頭打ちというか。

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―伝統的に使われてきた柄だと思うのですが、色を変えただけでも表情が全然違うから、面白いですね。そう考えると、パターンも果てしなくありますね。

篠田さん:そうなんですよね。

―あの、篠田さんに最初にお会いした時の印象なんですが、欲望の「よ」の字もない人って本当にいるんだなぁって思ったんですよね。

篠田さん:(笑)欲がない(笑)。

―そういう印象を勝手に持ったのですが。好きな仕事をずっと集中してやっていると、 邪念があんまりなくなるから篠田さんのような雰囲気になれたりするのかなぁ。。などと思ってまして。

篠田さん:いやぁ~「めんどくさいなぁ~」って思いながら作業してる時もありますよ(笑)。 ずっと寄せてると「あ~もう帰っちゃおっかなぁ~」なんて時だってあります(笑)。 でも、結局作業してるわけだから、「めんどくさいなぁ~」なんてそんなに思ってないんですけどね(笑)。

―作業してる時は何を考えながらやっているんですか?

篠田さん:いやぁ~ボーっとしながらやってますよ。「今回上手く寄せれたな」とか、 「こりゃ、あんまりだな」とか。お昼前になったら「お腹空いたな」って思いながら(笑) やってます(笑)。

―でも、この寄木ずーっと見てるとトリップしてきちゃいますよね。作業中、どんな感じでこの寄木が見えてるんですか?

篠田さん:ああ、だんだん焦点が合わなくなってきちゃいますよね(笑)。

―ずーっと毎日やってるんですもんね。。

篠田さん:そうですね。朝から晩まで。お昼休憩はありますけど(笑)。。

―ずーっと同じことを繰り返すというのは、宗教で言うと、修行の一貫みたいなものらしいですよ(笑)。

篠田さん:やばい。精神修行の世界だ(笑)。

―それでトリップし続けたら神に近づくということらしいです(笑) それにしても、木を集めて立体的な柄にしてしまおうと考えた人はすごいですよね。

篠田さん:寄木は「石川仁兵衛」さんという方が江戸時代に考えたんです。 最初はもっと簡単な柄だったと思うんです。それが色々試したら綺麗だったんで、 盛り上がってどんどん作っていったというような流れだと思うんですよね。 やってみようと最初に考えた人がいて、それが結構評判になったということもあると思います。

―ちゃんと発展していった、ということですよね。

篠田さん:そのおかげで、こうして寄木で仕事がいただけてます。

―発展して、継承されているということがすごいですね。もう死ぬまで寄木職人ですか?

篠田さん:もうここまでやりましたら、手が動かなくなるまでやります(笑)。

聞き手 collabore広報 服部雄一

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寄木細工職人 篠田 英治さん、アーティスト サイトウナオコさんとコラボレーションしたテーブルを現在製作中。

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